3.13

恋人とみた工芸の現代、のなかで截金ガラスというのを初めて見た。


彼と会っていたときは彼のことしか考えてなかったけど、今日その作品を思い出してみるみる美しさの記憶が蘇って取り憑かれてしまった。


ミュージアムショップでは截金ガラスの猪口が売っていた。

1つ約10万円。赤シールは付いてなかった。2人で良いお値段だね、と言ったあと展示品はいくらなんだろう、知ったところでどうすることもできないのだけど、という話をした。


作家を調べたらまだ40代の女性だった。麗しかった。

人間国宝のえりさよこさんのお弟子さんだった。彼女もきっとそのうち人間国宝になる。

あの時近くでもっともっとよく作品をみなかったこと、ほとんど値段しかみなかったこと、手が届かないと思ったことが急に惜しくなった。


思い返してとてもほしくなってきた。まだ赤シールは付いてなかったのが余計に惜しい。


後から思い出してどうしてもほしくて忘れられないものというのがある。

渋谷の瀬戸物やでみつけた硝子の猪口。

桐の箱にはいっていた。おそらく江戸時代の。

あの文様を見たことがある。とても柔らかい線と軽い感覚が忘れられない。

1万円。買えない値段じゃない、でも自分の低い給料のことを考えると手が出せなかった。

恋人へ贈る器を選びにきたのだった。自分のものを買う余裕も、その美しい器を恋人のプレゼントにしてしまうこともできなかった。


ずっと心残りになってる。


いま思うと、それはどちらもとんでもなく安かったのだ。きっと将来今以上の価値になるものだった。


心残りリストにもうひとつが加わってしまった。